2011年6月14日

いたしたる部屋白鳥の匂ひして
  
映画「ブラック・スワン」を観た。
  
前評判さながら、ナタリー・ポートマンの演技が光る。
  
「白鳥の湖」のプリマ・バレリーナに選ばれた生真面目な主人公が、
黒鳥の役を懸命に演じようとするうちに、自らの闇に心囚われ、
異形の存在へと変貌していく姿を見事に演じきった。
  
よく知られた話だが、
「白鳥の湖」にはふたつのエンディングが存在している。
  
王子と姫が海に身を投げる悲劇的な最後と、
姫にかけられた魔法が解け、この世で王子と結ばれるハッピーエンド。
さまざまな演出家が作品を手掛ける過程で発生したバリエーションだが、
今も悲劇とハッピーエンドの両方が世界中で演じ続けられている。
  
正反対の結末をどちらも心から楽しむことができる、
そんな僕達の矛盾した性質が、僕自身とても興味深い。
  
  
以下、白鳥の登場する句をいくつか。
  
高田馬場純喫茶白鳥にてくさる     攝津幸彦
白鳥は悲しからんに黒鳥も     高屋窓秋
千里飛び来て白鳥の争へる     津田清子
白鳥といふ一巨花を水に置く     中村草田男
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり     森澄雄

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