2011年6月18日

蠅ふりむけば母の顔なりしかな

蠅ほど世間から疎まれ忌み嫌われている動物はなかなかいない。

腐臭を放つものに好んで集まる習性があるし、
室内を大きな羽音を立てて飛びまわる煩わしさもある。
その幼虫である「ウジ」も腐肉に湧くなど、よい印象は全くない。

一方、蠅ほど俳人から愛されている動物もいないようだ。

古くは小林一茶の「やれ打つな蠅が手を摺り足をする」が有名だが、
近代以降も数多の俳人たちによって、数限りない作品が作り続けられてきた。

他ジャンルを見渡しても、ここまで蠅を愛する人種は俳人くらいだろうと思う。

かといって、それは特別に誇るべきことではないし、
そのことで俳句の豊かさやら優位性やらを強調する気もない。

ただ、俳句の先人達がそういう価値観の持ち主であったことは、
個人的にはとても嬉しく、意義深い。

なぜなら、僕も心から蠅を愛しているからだ。

以下、蠅の登場する句をいくつか。
蠅への愛が横溢した作品群、ぜひご一読いただきたい。

蠅たたき海のにほひの集会所     川崎展宏
蠅叩一閃したる新居かな     岸本尚毅
蠅とんでくるや箪笥の角よけて     京極杞陽
人生かがやく空瓶に蠅すみつきて     島津亮
虻よりも大きな冬の蠅ゐたる     高野素十
秋の蠅握つてそして放したり     夏目漱石
蠅叩くには手ごろなる俳誌あり     能村登四郎
仲秋の金蠅にしてパッと散る     波多野爽波
冬の蠅しづかなりわが膚を踏み     日野草城
戦争にたかる無数の蠅しづか     三橋敏雄

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