梔子の匂いくるんでいる白さ
目を覚まして、すぐにコートを羽織って母屋に向かった。青空の下、二風谷ダムの低くなっている辺り、向こうの山を覆うように白い霧が立ち込めていた。カムイノミが行われる日なのだ。カムイノミとは、カムイに祈る儀式のこと。その後に、イチャルパという霊魂供養の儀式も行われるという。朝から多くの人々が訪れ、準備が進められていた。台所では、たくさんの料理が作られていた。私は、チセにあるアペオイ(炉)の火の番をしていた。外に積んである薪を持ってきては、火の傍に置いて乾かしてくべる。
チセは茅葺き屋根の長方形の建物で、一番奥には大きな窓がある。ロルンプライ(神窓)と言い、そこがカムイの出入り口とされていた。その窓の前には、トゥキ(酒杯)やイクパスイ(捧酒箸)が並べられていた。アペオイ(炉)には、アペフチカムイ(火のカムイ)に捧げるイナウが立ててある。
火を囲むように薪をくべる。薪の燃える音を聞いていると、もう何年も前からここにいたような心地になってくる。こうやって、暖かい炎の揺らぎを囲んで、煙の匂いに包まれながらずっと暮らしてきたのではなかったか。薄暗いチセの中、窓から差し込む日を受けたイナウがきれいだった。

