精霊の宿木として夏の月
一度窓を開けた後、まずレラさんがトノト(お神酒)の入った杯を回す、この時に受ける人は、手の平を上にして、三回優しく円を描くように動かす。オンカミという礼拝の仕方で、一回目は天地に、二回目は万物に、三回目は出会いに感謝する意味があるのだそうだ。トノトは、レラさん、次にカムイの役割を担った男たち、そしてその場にいる全員に回ってくる。お神酒は、ほのかに甘いどぶろくだ。その後には、次々と食べ物が回ってくる。全部なくなるまで回り続け、両手が常に塞がっている状態で、てんてこ舞いだった。儀式と宴が同時に行われているようである。
イチャルパ(先祖供養)は、古い伝統と新しいものとが入り混じった不思議な儀式となっていた。レラさんは、事前に書かれた故人の名前や、参加者の名前の書かれた紙を、イナウで包み、小さく切ったタバコと供えられた食べ物を添えて、火にくべていく。燃やす時に立ち上る煙が、想いや食物を先祖へと届けるのだ。レラさんは燃え上がる火の中に、先祖の顔や虹を見るという。故人の名をくべて、姿が見えれば無事成仏したということ。参加者の名前をくべて見えるものは、その人についている先祖や体の不調なのだそうだ。それらを火にくべる度に、後で詳しく分かるようにとすかさず写真が撮られる。
そして、一通りの儀式を終えた時に、再びロルンプライ(神窓)が開けられた。窓からカムイが帰っていくのだそうだ。炎がわっと大きくなり、煙が白く長く立ち上った。
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私は、二十四年前の今日生まれた。遠のいていく出来事もできるだけ覚えて留めておきたいと思う。あの時の、炎の色や人々のざわめきが今も身体のどこかに確かにあると感じる。
