夏至の夕日種まき終えた手のひらに
日暮れまで時間があり、家の後ろに広がる山の方へ散歩してみることにした。音を立てるように枯れ葉を踏み上っていき、ふと顔を上げると、すぐ先に鹿がいた。同時に向こうも私に気づいたらしく、ぴたりと動きを止めた。しばらく互いにどちらが先に動くかと窺うように固まっていたのだが、引き返そうと思い、頭を下げて挨拶をした。するとなんと鹿も会釈を返してきたのだ。一人と一頭は何度も繰り返し頭を上げ下げし合い、鹿は山に去っていった。レラさんにそのことを話すと、鹿のカムイに会ったのだと笑った。
その夜は、ここにきてはじめて風呂に入った。風呂は、家から少し離れた建物にあり、途中は真っ暗闇だ。濡れた髪が夜に冷えていくのも構わずに私は暗闇をこれでもかという勢いで走った。布団に潜ってから、暗闇が怖かったという話をすると、女の子は「暗闇なんかより、アフンロパロの方が怖いよ。明日も行くんでしょ。死の世界の入口なんかによく行く気になるよ」と言う。私はアフンロパロの先に住んでいるのであろう、今はなき人たちのことを思い出しながら眠りについた。