夏風邪や身体遠くにある心地
新冠には、太平洋を望む浜辺に岬がある。その切りたった岩の下は少し奥まっていて、そこから窪みを見上げた。
判官館というこの場所には悲しい歴史があるのだという。江戸時代、越後小太夫という和人の鷹狩りがいた。小太夫はある時、崖から落ちてしまいアイヌに助けてもらい、首長シャクシャインの元で傷が癒えるまで世話になったのだという。その後、松前藩の城に戻ると、アイヌを焼き討ちにする準備を進めていたことを知る。小太夫は、すぐにアイヌにこの計画を知らせ逃げるように伝えに走った。アイヌを逃がしたことを咎められた小太夫は、見せしめとして焼き殺されてしまった。その場所が、判官岬なのだという。
持ってきていた酒と菓子で、イチャルパ(慰霊の儀式)を行った。レラさんの祈りの言葉を聞きながら、酒を海へと放った。寄せては返す波ばかりが響いていた。