2015年11月20日

学帽の遺影冬林檎ひとつ

芝不器男は写真が嫌いだった、と教えてくれたのは不器男の姪の疋田不踰子(ふゆこ)さんだった。写真屋を呼んで家族写真を写すときになると、ポイッと何処かに行ってしまったそうだ。「この時も不機嫌な顔してる。でも兄の浩四郎が初めてお嫁さんを連れてきたので、不器男一生懸命努めたところです。」と、残っている一枚の家族写真を見つめながら教えてくれた。
不器男は確かに、どの写真もポイッと余所を向いている。
不器男と暮らした経験を持つ最後の証言者だった不踰子さんが、今年4月に亡くなられた。淋しいが、百歳の大往生だった。