2011年7月24日

米粒ほどの蜘蛛に部屋の半分を提供してゐる

私ことノニノニは、飼い主御中虫の寝室に兎小屋を置いてもらい、基本的にはそこで生活している。
毎日1時間ほど、虫は私を小屋から出して遊ばせる。私の行動テリトリーは最初寝室の8畳だったが最近では隣室の8畳間の半分あたりまで進出している。

「これは飼いウサにしてはおそろしく広いテリトリーなのよノニノニ」と虫は言う。
「そうだね」
「というか、この家じたいがおそろしく広いことになっているんだけど」
「8DKだもんね…」
「最初に図面を見たときは何の冗談かと思ったわよ…まあ驚くべきことに現実だったんだけど」
「虫と弟の二人ぐらしでは、ちょっと使いきれないよね、8DKって」
「うん。あたしは物持ちだしすぐ部屋を散らかすから、それでも大丈夫使いこなせるって思ったんだけど…今や2階のほとんどの部屋は死んでいるわ」
「単なる物置だよねえ…」
「だからね!ノニノニ!あたしは部屋を間貸しすることに決めたわ!」
「え」
「だってそうでしょ?余ってる空間を遊ばせておく手はないのですもの。手始めに、書斎のあまり使わない方の半分を貸すことにしたの」
「誰に?」
「そこにいるわ」
  
私は目を凝らして見た。が、なにも見えない。
 
「何も見えないよ?」
「何言ってんのよ。そこにいるでしょう、ちゃんと」
「…あっ…」
そこには米粒ほどの蜘蛛が、天井のシャンデリアから糸を垂らしていた。
 
「貸すって、蜘蛛に貸すの?虫…」
「そうよ。なぜなら蜘蛛はこの家にはくさるほどいるうえに、彼らは好き勝手なところに巣をつくりたがるわ。それではちっとも部屋が片付かない!片付かないのよ!だから彼らを決まった場所に巣作りさせて、そのかわりあたしは蜘蛛の生活に干渉しないことにする、つまり蜘蛛の巣の破壊をしないと約束するのよ。どう、いいでしょう」
「いいけどさ…その場合、虫のメリットってなんなの?蜘蛛は家賃を払えないよ」
「蜘蛛は虫を食べるじゃない。あたしは蜘蛛だけならまあ我慢するけど、ほかのややこしい虫は嫌いよ。蜘蛛に食べてもらうわ、それが家賃変わりよ」
「ふーん」
 
そんな会話をする間にも、蜘蛛は書斎の半分ほどを蜘蛛の巣で埋め尽くしてしまった。

「あら、立派な蜘蛛の巣ができたようね。これなら虫もたくさん食べてくれそう」
「上機嫌なところ悪いんだけど、虫」
「なあにノニノニ?」
「部屋の半分を蜘蛛の巣で埋め尽くされた家に、いったい誰が遊びに来たいって思う…?虫は減るかもしれないけど、同時に友達も減るよ…たぶん…」
「…(◎無◎)!!…」

  

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