2016年10月1日

刺さっているのは流星のひとかけら

その日は散歩日和という言葉がふさわしい天気だった。だから久しぶりのデートは初めての町をぶらぶらとすることにした。商店街の外れで年季は入っているが小奇麗な洋食屋で遅いランチをする。私はオムライス、彼はビーフストロガノフ。食事が終わると細い川に沿って歩く。途中で小さな公園があった。奥の茂みに猫がいたので近寄ってみる。猫はしばらくこちらを見ていたが、とととっと行ってしまった。手持無沙汰で猫じゃらしなんかを抜いてみたりする。ベンチに腰かけるとふくらはぎのあたりが痒い。見るとぷっくりと腫れている。藪蚊にやられたのだ。そういえばさっき茂みのあたりで胴体に縞のある大きな蚊が飛んでいた。うう、痒い。思わずぼりぼりと掻いてしまう。すると彼は背負っていたリュックの中をごそごそと探りながら「かっちゃぐな」と言った。そして「ぱっぱぱぱっぱっぱーーーん、キンカン」と言いながらリュックの中から虫刺されの薬を高々と取り出して見せたのだった。

[かっちゃぐな]掻くな