忍者みな秋の風車を齧りけり
●〈かたち〉をまとう●
この町に来たばかりの頃、海辺を歩いていたら骨董屋がありました。何気なく足を踏み入れると、テーブルの上に彫りかけの熊が。おずおずと手にとったわたしに、店の主人曰く、
「その熊は、取り壊された、昔の風車の羽根を削ったものですよ」。
もと風車!? うーん、どうりで。
というのも、この熊に触ったとき、たしかに「役目を終えたもの特有の美しさ」というのを感じたからです。枯れた花のような。
かくして役目を終えた風車は大きな熊の〈かたち〉に衣替えし、我が家で隠居生活をすることになったのでした。