2017年9月15日

薄皮がささやく梨の三つかな

●配色の〈かたち〉●

ジョセフ・アルバースというデザイナー、わたしは全く意識したことがなかったんですが、やはり本物を見たときはびっくりしました。それが誰であるか皆目わからないまま作品集を買いに走り、それから、そうですねかれこれ10年近く、バウハウスの人だって気づかずに作品集を眺めてたんですよ。

余談ですが、わたしはこういうことがやばいくらい頻繁にあるんです。それが、ほんと脳の病気じゃないかと疑われるレベルで。

例をあげると、フランスに越して来た当初、ルーヴル美術館でミッシェル=アンジュの彫刻を見て度肝を抜かれ、やはり作品集を買いに走ってずっと眺めていたんですね。で、一年くらいして突然「あれ? ミッシェル=アンジュって、ミケランジェロのフランス語名じゃん!」と気づいた。もっと深刻なものだと、博物館で売っているポストカードにある「国宝」や「重文」などの記載を、作者の名前だとずっと勘違いしていたという怖い話もあります。だから博物館に行くたびに「わあ。また『重文』さんだ。ほんと『重文』さんって素敵な作品をいっぱいつくった人なんだねえ…」って素直に感動していました。なんと25歳まで。ああ…。(※)

閑話休題。

ジョセフ・アルバース〈方形のオマージュ〉の面白さは、よく言われるように、色彩の相互作用がミニマリスティックに表現されているところ。さらに、ここが自分にとって重要なポイントなのですが、ミニマルにもかかわらず豊かなのが素晴らしい。彼の作品において厳格さは方法の中にのみ存在し、観客の前にもたらされるのはただ単純な趣味の良さと、先入観を拭い去られることによる明るさこの上ない驚きばかりです。

(※)この錯覚、なぜかポストカードを眺めるときだけ起こるんです。例えば「重文・尾形光琳《風神雷神図屏風》」という表記だったら、重文さんのオリジナルが中国にあると解釈してしまう。うーん、やっぱり病院行った方がいいかも。