2012年7月11日

原子炉は何かの蛹だと思ふ

聞いたことのない音楽

いまだかつて鳴ったことのない音楽、鳴ったことがないのだから聞いたことのない音楽。

空はすみれ色だった。星は緑色だった。そして太陽もまた緑色だった。
 レザベンディオは吸盤脚を大きくひろげ、険しく切り立ったぎざぎざの岩壁にからみつけると、もとはといえばゴム状の円筒に吸盤脚をつけただけのその躯ごと、すみれ色の大気の中へと五十メートルあまりも突兀とそそり立った。
シェーアバルト『小遊星物語』種村季弘訳 桃源社 1978年 p6

この音楽は北部漏斗と南部漏斗とを結ぶあの中心孔からきているのだった。
 中心部というのは、漏斗壁がおそろしくぎざぎざに入り組んでいて、場所によっては相互の間隔が半マイルしかなかったのだが、この中心部では、夜の始まるときにかならず、急速に下降してくる蜘蛛の巣雲のために起る気流でできる巨大な音響が発生することになっていた。
同 p32