秋桜付箋がじやまになつてヰる
会社に行くとパソコンの画面は付箋だらけ、有給休暇の前に机の上に置いた書類トレイは山盛りになってたけど、その大半は「自販機に待望のしるこ登場!」とか「総務のY本さんが安奈先輩のガム食べてました」とか、要するにほとんどいたずらだった。
上司は予想通り、
「婚前旅行どうだった?」
ってニヤニヤ笑ってた。
発注していたキャンペーン用のリーフレットがトラックで届いて、みんなでバケツリレー式に倉庫に積んでいった。ヘリコプターの音がすごくうるさいのに見上げてもうろこ雲があるだけ、どこにもヘリコプターが見えない。上空を旋回してるみたいにずっと音が止まないんだけどヘリコプターじゃないとしたら何の音だろう。「ずっと鳴ってますよね」って聞いてみたけど誰に聞いても音なんか聞こえないって言う。耳鳴り? こんな耳鳴りあるの?
段ボールに引っかかったのか、ネイルについてたラインストーンが一つ取れてた。よく見てみると黴が生えてきてる。この前してもらったばかりなのに。
昼休みに予約の電話して会社帰りにサロンに寄った。ともだちのお姉ちゃんはいなくて、かわりにおかっぱの目のぱっちりした若い子がいて「お花がいいですかリボンがいいですか」って言うから「お花とリボンにしてください」ってお願いしたら「お花が生えてきてるのがとってもお似合いですね」って誉められて嬉しいけど、わたしのどこからお花なんか生えてきてるって言うんだろう「手首」ほんとうだ、左の手首、立体的に、サーモンピンクの薔薇が盛り上がって、爪もこれとおそろいにしてもらったらすごく素敵だろうリボンがぞろぞろ動いてかわいいから「誕生日の方にはろうそくになっていただくことにしてるんですよ」って彼女はわたしの薔薇に火を灯してそれはそれは熱くてきれいで「わたしの誕生日ですか」「いいえわたしのパパのです」ネイリストは下向いたまま照れたように微笑んだ。