2012年12月10日

砂場光りうぐひす数多の車輪となる     SSTbot

SSTスクラップ「ミステリー」前編

O 「前回の〈関悦史ミステリー俳句ベスト3〉が行われたのが2007年ですね。」

S 「2006年秋に北溟社から『新鋭俳人アンソロジィ2007』が出ています。僕はそのとき初めて存在を知ったのですが、関悦史のあの写真のインパクトは忘れられないですね。ああ、やばいやつが出てきたなと。」

M 「そうなんですよ、あれにはね、騙されたというか、また前衛ミステリー俳句のエピゴーネンが出てきたかと完全に舐めていたわけですが、違いました。『新撰21』で100作品まとめられたものを読んで、印象は完全に変わりました。そして今年の句集『六十億本の回転する曲がつた棒』。タイトルからしてもう、おかしいでしょ。もちろんいい意味でですよ。」

O 「5年の間に順位の変動はあったのでしょうか。ではまず第1位から。これは変動なしです。〈皿皿皿皿皿血皿皿皿皿〉。強いですね。平成三大奇俳句といえば、高山れおな〈麿、変?〉と、鴇田智哉〈人参を並べておけば分かるなり〉、そしてこの〈皿皿皿皿皿血皿皿皿皿〉と言われていますが。」

S 「これはもう平成ミステリー俳句の古典と言っても過言ではないでしょう。」

M 「わたしは〈エロイエロイレマサバクタニと冷蔵庫に書かれ〉が1位になるのではないかと思っていました。“皿”は万人受けしないのかと思っていたんですよね。何しろインパクト一本勝負でしょう。もしくは〈ムラヴィンスキーの《悲愴》の奥の客の咳〉あたりの新本格派が追随してくると読んでいたわけですよ。」

S 「“エロイ”とは種類は違いますが、“皿”も相当の強度がありますよ。有無を言わさない雰囲気といいますか、トリックは単純明快ですが突き抜けた爽快感がありますし、美しさもあります。」

M 「シンプルなトリックでひっくり返す、その美しさですか。漢字という古典的な道具を用いて作り上げたこの様式美は確かにオールタイムベストにふさわしいと思います。」

O 「第2位は今触れられた〈エロイエロイレマサバクタニと冷蔵庫に書かれ〉です。」

S 「“エロイエロイレマサバクタニ”ってなんだ?! と、一気に惹きつけられる作品ですね。」

M 「“わが神、わが神、どうして私を見捨てられたのですか”の意味ですけど、知らないとただ“エロイ”ですからね。本当の意味がわかった瞬間に恐ろしくなる。」

O 「冷蔵庫というのもどこかリアルですね。」

S 「この作品もしぶとく残っていくんじゃないかと思います。」

(後編へつづく)