「ほら、雪」と呼んでもしづかなる胎児  江渡華子

母の高揚に反して胎の子は無反応。「あれ、雪には興味ないのかな」なんていう会話を一方的に繰り広げてしまう母と胎の子の蜜月な時間が一句に流れている。
この句、何気ないところだが、「呼んでも」という一語に立ち止まらされる。ただ言っているのではない。「呼ぶ」という働きかけの強さに、子へ宿る愛情の深さが温かく伝わってくる。