山藤や眠くあかるくバスの旅   神野紗希

僕が紗希さん、または紗希さんの俳句と出会うとき、頭に浮かぶイメージは長くのびた一本の国道だ。それはおそらく北海道の旭川辺りの、涼しい風吹く一本道(それ自体が地平線を成してしまうような)。それはたぶん紗希さんのパーソナリティーとは関係のない風景だろうとは思う。でも、その架空の風景は確かに僕の中にあり、離れないもののひとつとなっている。
だからこのバスのゆく道も、周囲に遮るもののない、短い夏の一本道だ。心地よさに瞼を閉じれば、自分の周囲の全てがあかるいという一言に還元される。
この文章を書いて行くなかで、その風景の謎を解き明かしてゆけたらと思っている。

「粒の種」(2012.6)より。