恋幾度セーター脱げば静電気   神野紗希

紗希さんの句には女性的な描写がよく出てくる。ように思う。この句も別に男性が作っていてもおかしくはない文体で描かれているが、やはり女性的だと感じてしまう。その原因の一つはおそらく、紗希さんの句の中では恋愛が摂理的なものとして描かれるからだ。セーターを脱ぐと静電気が生じるように、生きて、暮らしていくときには恋愛が必然として、そこにある。それを屈託なく受け入れている作者の姿を見るとき、一種の羨望をもって僕はそこに女性性を認める。

「N」(2012.12)より。