どこにでも架かりて虹の遠きこと   野口る理

る理さんの俳句にはいつもる理さんがいる。そんな気がしてならない。勿論、作中主体と作者が別であることが僕の主義ではあるけれど、また、る理さんはプライベートなことを直接句の材料にするタイプの作家ではあまりないこともわかってはいるけれど。だけど。

掲句も、「どこにでも虹は架かる」「虹は遠くにあるように見える」という二つの発想をハイブリットした構成を持った句で、表面上はそれだけだし、そこに象徴性を感じ取るのはあまりに安易な気もする一方で、る理さんの俳句全体に対する僕の印象のある一側面が、この句に現れていることは確かだ。る理さんの俳句の「遠さ」。それが何に起因するのか/いったい何に対してどう遠いのかを、この10日間で考えていきたいと思っている。

「感激」(2012.08)より