邑書林にて文庫本化された牧羊社の句集「にもつは絵馬」より引いた。
妻が眠っているのは、男と一緒の部屋だろうか。別室だろうか。
一緒の部屋であってほしい。寝室で、男がひとり起きている夜なのだ。
「ゆっくりねむりなさい」と男が言うので、寝苦しい夜、妻はひとりで眠りにつく。
その寝顔を見ながら、男は部屋に滝を満たすのだ。
部屋中に滝が落とされているのに、妻は眠り続ける。
それは、男がもたらした滝により、涼しさが訪れ寝苦しくなくなったからだ。
「落としてみる」と軽く言うことで、男のすることが本気のことなのか、ひとを馬鹿にしているのか、わからなくなる。
男はためしに部屋中に滝を落としたのだ。落とした理由は本人にも見当のつかない思いつきなのだろう。男は自分の試みが成功か失敗か考えるのだ。なおも眠り続ける妻の顔を見ながら。