羅の肩にひとすぢ折り目かな  長谷川櫂

花神社の句集「蓬莱」(2000年)より引いた。

 

句の調べがよく、羅にある肩の折り目という抒情的要素が、「ひとすぢ」とひらがなで書かれることにより、淡泊性をもつことが面白い。淡泊になっているものの、抒情性も消えていないのだから、尚面白い。

 

この羅は、その年初めて出したものなのだろう。折り目はひとすぢしかないのだから、箪笥の中で、きちんと折られ仕舞われていた跡だ。その折り目を見て、作者はその羅も、羅を着ている人にも好感を抱いていることがわかる。その率直な好感が、暑さをぬぐってくれるような清々しい気分にしてくれる。

 

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