別々の夢見て貝柱と貝は   金原まさ子

ひとつの貝としてあるはずの「貝柱」と「貝」。それでも「別々の夢」を見ているという。
生きている貝のとろりとした質感と「夢」の取り合わせがあざやかだ。
「貝は」という広がりのある終り方に、夢と現実の境目があやふやになりしずかな余韻が残る。
この「貝柱」と「貝」は、私とあなたの比喩とも読むことができるだろう。
「別々の夢」を見ているということのさみしさと気楽さ。
生きるということは本質的にひとりであるということに、やわらかく向き合っているのだ。

作者の金原まさ子さんは、本日のテレビ朝日「徹子の部屋」にご出演。
黒柳徹子さんの気に入った句として、掲句も紹介されました。

『あら、もう102歳』(草思社、2013)より。