夏つばめマリアも面あげられよ   陽美保子

マリア像は、それを仰ぐ人をまなざすように、少し伏し目がちであることが多い。夏空を謳歌する燕の飛翔に、目を奪われる人たち。マリアさま、あなたも面をあげて、夏つばめをご覧ください、そんなところだろうか。

「あげられよ」と、あえて敬うような言葉遣いをしたことで、マリアさまに燕を見てもらいたいという奇想を自覚的に書き出していて、それがちょっとしたおかしみを醸し出している。あとは、お願いの形式でもあるから、少し切実な気分もまぎれこむかな。

  

第一句集『遥かなる水』(本阿弥書店 2011年6月)所収。タイトルが象徴するとおり、しずかで遠い光がきらりきらりと輝くような句集。そんな句の傾向と、冬という季節の内実がぴったりくるのか、中でも冬の句に惹かれるところが多かった。「初雪になりさうな木のにほひかな」「海光に甲板の雪捨てにけり」「足跡に囲まれてゐる聖樹かな」「おたまじやくし帽子の影の大きくて」「鶴にふる雪わが肩につもりをり」。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です