くちなはを首より棒に巻き移す   前北かおる

動物園では、大蛇を首に掛けてみる体験ができるところもある。体験させてもらって、ひとしきり、きゃーきゃー言ったあと、飼育員がうまいこと、客の首から棒へと蛇を移動させる、そのしまいのところを見つけて句に詠んだ。「巻き移す」と動詞を重ねたところで、蛇のあのするするとした動きが、リアルに想像される。

  

第一句集『ラフマニノフ』(ふらんす堂 2011年5月)より。「一月五日 マレー半島縦断 三〇日、シンガポール動物園」と前書きがある。東南アジアの動物園での旅吟だ。

   

この句集、異色だ。なぜかというと、序文は父に、挿絵は夫人に書いてもらい、全ての句には日付が付されている。どこで作られたかという前書きのあるものも多い。句集とはプライヴェートなものであるという作者の思想が、首尾一貫していて、それはそれで気持ちよい。

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