故郷と呼べぬ町あり誘蛾灯   江渡華子

童謡というのか唱歌というのか「故郷」という歌は故郷をある意味、桃源郷のようなものにしてしまった。時代というものもあるのだけれど、なんだか、錦を飾らないと帰れないような敷居の高いものが故郷だ。交通事情もあり、気軽に故郷に帰れなかった。
でも今や、「地元に帰って、地元の友だちとオールした」なんていえる時代。故郷から地元に言葉が代り、敷居も低くなった。また交通も発達したから、色んな手段がある。
街に比べたら、この町は小さいけれど、それでも不自由することはない。それはそれでいいのだけれど。誘蛾灯に照らされて、薄っすら見える田園。抒情とはなんだろう。

2013.8.1「夏蝶」