蝶の逝く掴みし巌に掴まれて  照井翠

巌に止まったのを最後に死んでしまった蝶。蝶が最後の力を振り絞って巌にしがみついていた、というところまでは常識的だが、巌のほうからも掴まれていたというところにゾッとした。すぐそこに忍び寄った死からは逃れられない、というような恐怖からの「ゾッ」だろうか。象徴性の高い一句。

第五句集『龍宮』(角川書店 2012年11月)より。