打ち水を止めて痩せたる犬通す  柳沼新次

家の前の道に打ち水をしていたら、痩せてみすぼらしい野良犬がやってきた。水をそちらにやって追い返すこともできたが、この人は打ち水の手を止めて、犬の歩みを見送った。あわれみか愛か。いたたまれない思いがにじむ。

句集『無事』(ふらんす堂 2013年12月)より。妻の介護をする日々をつづった句集。掲句のような風景も折々たちあらわれてくるところに、季節を詠む俳句という詩型の中で人の生をとらえること自体に、哲学が宿るのだと気づく。