粽つてこれ超可愛くなくなくね  佐山哲郎

少女たちの会話、と書きかけて、少女という言葉に違和感。ギャルといったほうが、この句のテンションにはしっくりくる。ギャルの会話が、そのまま一句になった。

翻訳すると、「粽ってさ、これ、すごく可愛いよね、可愛くないなんてありえないよね?」という感じだろうか。「可愛くなくなくね」というのは、「可愛い」の二重否定。一時期、若者言葉として、この「~~なくなくね?」というのが流行った。若者言葉が備えているリズム感が、一句の韻律を飛び跳ねさせている。

なんにせよ、粽のチョイスがいい。兎とか、アイスクリームとか、明らかに可愛いものだと当たり前。かといって、ドクロとか、狼とかだと、逆を狙ったあざとさが出る。粽って、絶妙に、死角だ。言われてみれば、くるくる縛ってあるところや、ひらけば白い餅が出てくる感じなど、なんだか、ちょっと可愛く見えてこないわけでもない。このギャル、なかなかいいセンスしとるやんか、と思う。

『娑婆娑婆』(西田書店 2011年7月)より。