君は私の舟だつたのに秋麗  大高翔

舟が船ではなく舟であることで、人という許容量のリアルがあるなと思う。過去形であることから、別れを詠んでいるのだろうが、水いっぱいの場面で湿っぽさを感じる一方、秋麗という少し乾燥し、突き抜けたような晴天を見せることで、思いをひきずっていないんだという意思を感じる。舟が突然なくなったら、主人公は泳ぐか沈むしかない。しかし、こんなにもあっけらかんと詠まれているのは、新しい舟が既に手に入っているからではないだろうか。

句集『キリトリセン』(2007年4月 求龍堂)より。