吟行なり散歩なり、複数人で歩いているときに、蓑虫に出会ったのだろう。本当は人といるはずなのに、蓑虫に見入った時、作者は自分の世界に戻り、外の世界を遮断したのではないか。じっと見ているときに思う感情は、口に出さない限り自分だけのものだ。それは他の、例えば鈴虫を見ている時も起こりうる現象なのだろうが、蓑虫は他のものよりその包まれ、中身が見えない姿に宇宙を感じさせ、より人の感情を引き寄せる。人は覆われ隠されたものにこそ神秘を覚え、他の存在を(この場合は一緒に歩いていたひとを)忘れ、自分の内側に広がる世界へと帰るのではないだろうか。そして、作者は皆が自分の世界に戻ったのを感じ、孤独を感じるのだ。
句集『沙鷗』(2009年 ふらんす堂)より。