上着きてゐても木の葉のあふれ出す 鴇田智哉

木の葉は冬の季語、寒いから上着を着る、「だから」木の葉があふれ出す、という順接が通常。なので、「ゐても」と逆説で接続している理由を探し始める。私は、上着をきて(かくして)いても、木の葉があふれ出してしまう、という感覚で読んだ。まるで、上着の外ではなく、上着の内側から木の葉があふれてきてしまうような感じがする。自分のからだとか自我とかいうものは本当はなく、すべて木の葉であったとしたら。すかすかしていて、風が吹いたら一瞬ですべて消え去ってしまいそうな、わたくし。

『凧と円柱』(ふらんす堂 2014年9月)より。