新酒注ぐ肘ほのあかき宿浴衣  小川軽舟

肘は自分で思っている以上にこする場所なので、赤くなりやすい。自分では見えづらい位置なので、これは新酒を注いでもらっている景なのだろう。宿浴衣に着替え、人に注いでもらった新酒を飲む。とてもうらやましい光景だ。「肘ほのあかき」ときて、「宿浴衣」と言っているので、浴衣を少しまくって注いでくれているのが、時間差でわかる。新酒を注ぐ様子が丁寧に描かれている。「ほのあかき」がひらがなであることから、全体を柔らかい印象にし、色気を引き立たせている。

『鷹2014年11月号』より。