庭狭し石鹸玉割るための指  小鳥遊栄樹

狭い庭いっぱいに、しゃぼん玉を満たしている、その小さな幸福感に胸がいっぱいになる。「庭狭し」と上五でサクッと舞台を限定し、残りの12音でゆったりと、その庭で何をしているのかを示している。
「石鹸玉割るための指」という表現にもあやがある。ただ石鹸玉を割って楽しんでいるだけではなく、ほかの立派なあれやこれをするための指ではなく、僕の指は石鹸玉を割るための指なのだ、という、さかさまの矜持を読み取れる。

句文集『二十歳前夜』(私家版)より。俳句甲子園OB、浦添高校出身の、まさにタイトルのとおりの若者。