「違う」「いやだ」この否定言葉を使用するのが得意ではない人は、結構いるのではないだろうか。結局言葉の強い相手の思うとおりになってしまうことに、不満はあるけれど、言えない。「違う」と思った時は少し強気だったかもしれない。しかし、それが言えない自分に気づき、「いや」と弱気に思うその気持ちの変化が漢字からひらがなへの移りで読めてくる。蕪汁の蕪が少し溶け、汁にかすかな粘りが生じる。のどを通るそのかすかなひっかかりは、作者のもやもやした感情そのものなのではないだろうか。
句集『微熱のにほひ』(2012年 ふらんす堂)より。