夜行のスキーバスだろうか。眠りから覚めたとき、すでにスキーバスは雪景色の中。「ゆきのなか」といわず「ひかりのなか」と言ったのは、目覚めたときの認識に忠実な表現だ。はっと目が覚めたとき、彼は本当に光の中にいる。ややあってようやく、「ああ、雪の光だ」と知る。「光の中」と漢字で書かず、「ひかりのなか」と平仮名に崩して表記してあるのも、起き抜けのぼんやりした思考状態を思わせて巧みなはからい。
「群青」7号(2015年3月)作品10句「ひかりのなか」より。普通の人の普通の時間を、きらっと輝かせて言葉に紡ぐセンスのある人。10句からほかにいくつか。
星とほし缶珈琲を懐炉とす
心臓のあたりに兎抱けば啼く
グラタンを掴むミトンや十二月