ひとつ食べ百をながめてさくらんぼ  江崎紀和子

百もさくらんぼがあるという状況、さくらんぼ狩りを想像した。
木からひとつぶ、さくらんぼをとって、口に入れる。
さくらんぼを味わいながら、その瞳は風に赤く揺れるさくらんぼたちを見るともなく眺めている。

さくらんぼを百粒もは食べられない。食べきれないというのは、私のものではない、ということ。さくらんぼの風景は、自分の外の世界へと、つながり広がってゆく。その解放感ともさみしさともいえないかすかな気分が、一句の中に漂っている。

『月の匂ひ』(東京四季出版 2014年9月)より。