背に載せて運んできた炭が、荷を下ろした後でも毛の隙間に残っていて、それが馬の毛並を梳いて手入れしてやっているときに、ぽろりとこぼれたのだろう。馬の哀れが思われる瞬間だが、一報で、馬の毛の剛さや、炭や獣の放つ匂いが、冷たく張りつめた冬の空気の中で、あたたかく感じられもする。そんな、馬とともにあるみちのくの生活の瞬間を、大きく包み込む上五としての「冬永し」。こんなふうな瞬間を積み重ねながら、営々と冬を過ごしてゆくのだ。永遠と瞬間の引き合いで、句の時空がぐーんと伸びた。
『木附沢麦青句集』(東奥日報社 2015年8月)より。既刊の四冊の句集から90句ずつ、計360句を抄出。東北の荒々しい風土とそこに根差す人々の体温を句に写し取りつづけた、彼の句業を眺め渡せる一書となった。