つぎつぎに蜜柑を貰ふ旅の空  矢野玲奈

これはきっと愛媛だ、と嬉しくなるのは、私のただの故郷びいきで蜜柑どころならどの地域でもいいのだが、蜜柑のとれるところというのはたいてい温暖で気候のおだやかな風土であるからして、次々に蜜柑をくれる人たちのいる土地柄でもあるわけだ。加えて、蜜柑はその場で皮をむいてパッと食べられる果物。他の果物ではこの旅の気安さ嬉しさは出ない。まあ、要するに、良い旅なのだ。
「旅の空」という着地も面白い。視線を空へやることで、いろんな人に出会った今日の時間を思い返している作者の姿が見えてくる。

第一句集『森を離れて』(角川書店 2015年7月)より。