セーターの人樅の木を囲みけり   青本瑞季

まず〈セーターの人〉を見せる語順に工夫がある。
〈セーターの人〉がいて、〈樅の木〉があって、囲むということは〈セーターの人〉が何人もいて。
この〈樅の木〉は背景でしかなく、この句の中心ははっきりと〈セーターの人〉だ。
それでいて、この人達の情報は〈セーター〉を着て木の周りを囲むようにいることしかない。
シンプルな言葉が景をもシンプルにし、毛糸と肉と木に直接触れたような読後感がある句。

『群青 2月号』(群青俳句会、2016)より。

第145回勉強会【私の思う現代の俳句150句】