すみれそよぐ生後0日目の寝息  神野紗希

(スピカ「岸辺」2016-3)

「すみれそよぐ/生後0日目の寝息」と、切れていると読みたい。生後0日目の子に顔にすみれを近づける、或いは野原に寝ころばせることは考えにくいし、寧ろ「すみれそよぐ」という措辞は、たまらなくかわいい寝息から導き出された慈愛の感情だと思うからだ。
親ばか俳句は成功しないと言われるけれど、紗希さんの世界の煌きにすごく馴染んでいる。かつて仄暗かった世界の観測点から、新たな命が生まれ、慈愛に満ちた風がこんなに近くにある。世界の中心が二つになったのかもしれない。