乳離れして誇らしき夏野かな 江渡華子

 乳離れには、卒乳と断乳とがある。断乳とは、乳離れできない子に対して、強制的におっぱいをあげないようにすることである。それに対して、卒乳とは、子ども自らがおっぱいから卒業していくことだ。
実際、乳離れは大変なものだと母が言っていた。おっぱいからずっと離れず、ほかの物事にいつまでも興味を示さなになかったらどうしよう。育児休暇が終わるまでに乳離れさせなければ、大変だ。そんな母の不安もある。その一方で、「いつまでもおっぱいばっかりじゃだめでしょ」など周りの大人達に言われて、子どもも理解して、おっぱいを卒業するという。
「誇らしき」という気持ちが、夏野という空間の広さと吹きわたる心地に転換される造りになっているのであるが、この「誇らしき」は子と母のふたりの思いでもあるのだ。

(2015-6 しわくちや)