子の涙丸く落ちるを見てをりぬ 江渡華子

季語は無い。ただ、句の一連を見るに春だ。
「金魚玉水を正しきかたちにす 越智友亮」(『新撰21』邑書林2009₋12)があるが、水は球がもっとも安定する形らしく、「正しいかたち」は本当にそうらしい。
落ちてゆく涙を眼で追うのは、なかなかの動体視力だが、涙腺をなぞって漲る涙がその始まりの形として想起される。涙のことを言うのであれば、「見てをりぬ」が要らないと思われがちだが、寧ろ言いたいことは「見てをりぬ」にこそあるのだろう。

(2016-3 花粉症)