潮風をつくる装置として鯨   野口る理

 絵が下手なので、鯨を書いても海鼠と間違われる。背中に噴水を書かなければ、80%の確率で間違われる。
《雲流す仕掛に蝶が来てゐるよ》(佐藤文香『君に目があり見開かれ』港の人、2014-11)の「仕掛」と「装置」は違っていて、もっとメカニカルな気がする。生き物と思えない大きさは言わずもがな、肉は食用、油は革製品用、歯や骨は工芸品など、それぞれの用途に分けて、パーツに解体されることなども「装置」であるような気がする。なんだか公園などにあるような噴水ありきで鯨を認識しているようにも思える。

(スピカ「冬の装置」2015-12)より。