海の底見てきた夜の扇風機  小林かんな

扇風機は扇風機でも、昔の、羽の青い扇風機。海の底のふかい青色と、夜の闇の中に浮かび上がるあの羽の青がリンクする。夜もまた海の底のようなもので。なまぬるい風に、海の底で感じた海流をふと思い出したりもして。

「週刊俳句」478号(2016年6月19日)10句作品「休日」より。

金魚より長生きをして詩を読んで

も惹かれた句。漫画『南くんの恋人』で、小鳥が死んでしまった理由を問う子供に、母親が「小さいからよ」と答えていたのを思い出す。金魚より長生き、だから、きっと人間としてはまだまだ若いのだ。その、詩に耽溺するような若さを、「金魚より長生き」と反転させたところが面白い。