バナナジュースゆっくりストローを来たる  池田澄子

バナナジュースは家で作ることができるジュースの代表である。バナナと牛乳と砂糖と氷をミキサーにかけるとあっという間にできる。気分次第でゆるくもかたくも作れるのだが、ゆるく作っても、やはり濃厚であるのは、バナナという水分の少ない果物の特徴だろう。

 

家で飲み物を飲む時、基本ストローは使用しないのだが、バナナジュースの時だけは使う。濃厚な飲み物を飲む時、直接コップを口にあてると、どばっと口中に入ってきてしまい、美味しく味わえないからだ。しかし、そういった飲み物は、ストローを使用すると、のぼってきにくいものである。「ゆっくり」が片仮名にはさまれていることから、穏やかさ、豊かさを読み取ることができる。

 

ゆっくりゆっくりのぼってくるバナナジュースを、わくわくしながら吸い上げる、とても幸せで明るい句である。

句集『たましいの話』(角川書店 2005年)より。