とても、美しく高い句である。
神の視点と言われるような視点で詠まれたその景に、イカロスを思う。イカロスはきっと、鷹と飛び、鷹よりも高く飛んだのだろう。光を浴びる鷹の背に見とれ、自分の背中にも光がいることを知らずに、羽が溶けていくのに気付かなかったのではないだろうか。
雪渓は光を返すだろうし、鷹は光に挟まれている状態だ。雪渓の冷ややかな鋭さと猛禽類独特のしなやかな鋭さが響き合っている。
鷹は雪渓に降りられる場所がないことを知っているので、もうしばらく光に背を貸しながら高みを飛んでいるのだろう。
「ともかがみ」(『俳句 8月号』角川学芸出版より)