蟇無々といふ顔してゐたり  中西夕紀

 句集『朝涼』(角川書店 2011年7月)より。

一文字に結ばれた口が、気難しそうなおじさんのように見え、黙って座っているだけで貫禄がある、うらやましい生き物である。蟇は物語に登場することが多い。それは、この顔を見ていると、蟇に感情があるのではないか、と人間の世界に引き寄せて想像しやすいからではないだろうか。

  

「ゐたり」としていることから、蟇は動かないことがわかる。作者が目の前に立とうが、動こうが、観察されようが、おかまいなしなのである。