大夕焼スマホにをさめ妻見舞ふ  羽貝昌夫

夕焼の中、妻の見舞いにゆくその人。この時間まで見舞いに行けなかったのだから、きっと仕事帰りなのだろう。ということは、妻も夫も、ある程度若い。もちろん、産院への入院など、明るい見舞いの可能性もある。でも、一日の終わりを告げる夕焼けのさびしさに加え、大きな夕焼けが小さなスマホに「をさめ」られてしまうところにも立ち上がる一抹のさびしさが、どうしても心細さを誘う。妻もまた、小さな病室の窓に切り取られた、夕焼をいま見ているだろうか。もしかしたら、この画像は、見せないかもしれないな、と思った。

Eテレ「NHK俳句」2017年8月13日放送「夕焼」特選9句より。