ビーカーにマスカット盛る理科教師  滝川直広

透明なビーカーに、さわやかなグリーンのマスカットが盛られている、その光景を想像するだけで、とくべつで嬉しくなる。マスカットが、たくさんの透きとおった光を連れてきてくれる。

「俳句」(KADOKAWA)2017年11月号、第63回角川俳句賞候補作品「白多し」より。

正木 句としていいかどうかは別として、実がないと詠めない句。誠実な詠み方だと思います。

実があるだけだと、些末な内容にとどまってしまう可能性があるから「句としていいかどうかは別として」という前置きが入るのかもしれない。でも、この句、私は好きだなあ。ビーカーと、マスカットと、理科教師と、この句に登場するものたちがみんな、互いに照らし合って、輝きを増している。