人形のすすむはやさを流れ星  鴇田智哉

すすむ人形とは、自動的に歩くからくり人形のようなものだろうか。ゆっくり、しかし同じはやさで確実に、前身する人形。その速度に目が慣れたところに、さっと一瞬、星が流れる。速度をふたつ重ねたことで、流れ星の速さが、さらに増して感じられる。「すすむはやさを」のひらがな表記が、ちょっとホラーっぽくもあり。流れ星が流れたのちの暗がりを、人形は進み続ける。

「オルガン」11号(2017年fall)より。