本当は逢いたし拝復蟬しぐれ   池田澄子

きっと「本当は逢いたし」とは書かれていない、きりっとした文章の手紙なのだろう。
丁寧に抑制されていながらも、手紙を書いている相手への思いに溢れている。
手紙などではなく、実際のあなたに「本当は逢いたし」なのだ。
この言葉が社交辞令ではなく本心であるということは、
「蝉しぐれ」の暑苦しくも切実な声で読み取ることができよう。
この句の自解を抜粋すると、
第二句集『いつしか人に生まれて』を纏めているとき、タイトルを幾つか考えた。その中の一つが「拝復」だった。迷っていると三橋先生が、ちょっと地味だな、第三か第四句集ならいいけども、と仰ったのだった。
そして、先日上梓された第五句集のタイトルが『拝復』なのである。

『シリーズ自句自解Ⅰベスト100 池田澄子』(ふらんす堂、2010)より。

「あつまる」「シリーズ自句自解ベスト100大好評 池田澄子最新句集『拝復』刊行W記念イベント」